宮城県石巻市桃生(ものう)町で栽培されている「桃生茶」の茶摘みがあり、桃生小学校6年生が「地域の宝」の手摘みを体験した。茶葉は地元の企業が和紅茶にし、6年生の卒業時にプレゼントする。
16日、北上川沿いの山間地の茶畑。新芽とその下の3枚の葉を摘む「一芯三葉」を基本に、1組と2組が、時間を分けて次々と摘んでいった。
桃生地区は少子化の影響で4月から3小学校を一つに統合し、6年生は42人になった。6年生は「地域の宝を見つけよう」と、年間を通して桃生茶を学ぶ。5月は桃生茶を味わった。7月は桃生茶の茶葉から和紅茶を開発した石巻市のファーム・ソレイユ東北の工場を見学する。
初めて茶摘みをした首藤源与(みなと)さん(12)は「摘むのは難しいけど、楽しかった」。緑茶も紅茶も飲んだが「紅茶の苦みが良かった」という。地元の名前がついたお茶があることを「誇りに思う」と話す。
ソレイユは、創業約50年の「お茶のあさひ園」を母体に設立。東日本大震災後、石巻の産物を使った商品で「復興に貢献しよう」と、桃生茶から新たに和紅茶を開発した。
同じ茶葉から緑茶と紅茶のどちらもできるが、紅茶は発酵させる工程がある。同社の社長が、静岡市で和紅茶を復活させた「丸子(まりこ)紅茶」の村松二六氏に紅茶の製法を学び、2017年に「kitaha―和紅茶」を商品化した。kitahaはG7広島サミットの夕食会で首脳らに振る舞われ、石巻を世界にアピールしたことでも知られる。
宮城のお茶は、仙台藩の初代藩主、伊達政宗が奨励して栽培されるようになったとされる。だが、桃生地区では生産が減少し、今では桃生茶の栽培は約1・5ヘクタールにとどまるという。
茶摘みを指導したソレイユの企画・開発室長の日野朱夏(あやか)さん(32)は「自分の手で摘むことで桃生茶に愛着がわく。その土地にいいものがあることを知ってほしい」。存続の危機にある桃生茶の魅力を知らせ、次の世代に伝えたいという。