現場へ! 移民・難民 揺れる英国(5)
政党の集会のはずなのに、そこには、映画撮影で使うような、街角を再現したセットが設けられていた。
赤い電話ボックスは落書きだらけ。伝統的なパブは閉店し、目抜き通りには賭け屋と、外国人の経営する理髪店が並ぶ。道路には補修されぬままの穴があき、脇に回収されないゴミが積み上がる。
3月下旬、右派ポピュリスト政党、改革党がバーミンガムで開いた集会でのことだ。英国の地方都市で実際によくみられる光景で、「壊れた英国」が表現されている。
白人が9割以上を占める参加党員を前に、党首ナイジェル・ファラージが英メーカーJCBの掘削機に乗って姿を見せた。メッセージは明確だった。
街並みも生活も「すべて最悪の状態」
「移民があまりにも多すぎるために、すべてが最悪の状態になっている。私たちは、厳しく取り締まる」
街並みが変わったのも生活が苦しいのも、移民のせい。14年間政権を握っていた保守党も昨年の総選挙で勝った労働党も、移民を抑制できなかった。改革党は違う。難民申請者の対応に口を挟む欧州人権裁判所から離脱し、英仏海峡を渡ってくる難民申請者は海上でフランス側に送り、不法移民は即送還する――。
そんな主張が、いまの英国で…