第107回全国高校野球選手権兵庫大会(朝日新聞社、兵庫県高校野球連盟主催)は28日、東洋大姫路が164校153チームの頂点に立ち、14年ぶりの夏の甲子園出場を決めて幕を閉じた。熱戦が繰り広げられた今大会を、担当記者が振り返った。

 決勝は、1977年の夏に全国制覇し、「夏の東洋」と呼ばれた東洋大姫路と、昨春の選抜大会で準優勝した報徳学園という実力校同士の対決になった。準決勝まで両校のチーム防御率は1点台で、ロースコアの試合を予想していた。ところが、決勝は互いに点を取り合う展開になった。

 最終的に東洋大姫路の打力が少し上回った。チーム打率は3割9分6厘で、7試合86安打のうち二塁打以上の長打が23本。けがなどを防ぐために昨年導入された「低反発バット」を感じさせないスイングの力強さがあった。中でも高畑知季選手(3年)は5回戦の明石商戦、準決勝の小野戦で試合を決める本塁打を放った。投手陣では木下鷹大投手(3年)が5回戦と決勝で完投した。

 一方、兵庫大会連覇を目指した報徳学園は、昨秋の県大会で初戦敗退。長い冬を越えて迎えた今大会は準々決勝、準決勝でコールド勝ちし、投打ともに総合力が高かった。昨夏の甲子園を経験した山岡純平選手(3年)と橋本友樹主将(3年)の二遊間がチームの柱となり、「逆転の報徳」の片鱗(へんりん)をみた。

 台風の目となったのは、ノーシードの小野だろう。記念大会で東西にわかれた2018年の西兵庫大会以来の4強入り。エースの本山翔主将(3年)が6試合全てで先発し、うち4試合で最後までマウンドに立ち続けた。準々決勝は九回2死から逆転サヨナラ勝ち。堅い守備からリズムを作る粘り強い野球で、観客らを魅了した。

 久しぶりに上位に名を連ねる高校も多かった。

 9年ぶりの4強となった神港学園は、左右の「二枚看板」の継投で勝ち上がり、準々決勝で一昨年の覇者の社に勝った。三田学園は23年ぶりのベスト8。双子の三輪奈由太選手(3年)と歩由太選手(3年)の活躍が光った。

 強力打線の神戸国際大付や関西学院も実力を発揮し8強に入った。

 好投手の存在も目立った。明石商は5回戦で東洋大姫路に敗れたが、石原大暉投手(3年)が4回戦で無安打無得点試合を達成。宝塚のエース安村煌世投手(3年)は、4試合連続完封で38イニング連続無失点を記録した。

 今大会は部員不足などで、21校が10の連合チームを組んで挑んだ。

 県立高校再編で2027年に閉校する網干は、2、3年の部員17人で今春の県大会から快進撃を続けた。今大会は4回戦で敗れたが、観客席から大きな拍手が送られた。

 大会期間中、試合に負けた多くの選手たちに「できたこと」と「できなかったこと」を聞いた。どの選手も「できなかった」ことに涙した。「もっと練習しておけばよかった」という後悔も聞いた。

 ただ、仲間とともに練習した2年半の積み重ねが、「できたこと」につながったことは間違いない。一生懸命、必死にプレーする姿が、見る人たちの胸を熱くさせたことを、いつか笑って振り返ってほしい。

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