参院選で外国人政策のありようが争点化しているのを、外国人の従業員に頼ってきた飲食業界はどう見ているのか。飲食業界でつくる大阪外食産業協会(会員企業560社)の井上泰弘副会長(60)に、業界の実情などを聞いた。

大阪・関西万博のパビリオン「宴~UTAGE~」で、案内役の外国人スタッフに囲まれる井上泰弘さん(中央)=2025年7月18日、石田耕一郎撮影

――協会で10年近く、外国人スタッフを適正に雇うための勉強会などを率いてきました。自身も複数の飲食店を経営していますが、業界にとって、外国人はどんな存在ですか。

 私は飲食業に関わって40年以上になり、現在も中華料理や和食などのチェーン店を十数店、フランチャイズで営んでいます。その経験から言うと、飲食業は労働集約型で、他の産業に比べて給料が低く、人気の業種だとは言いにくいです。多くの人が休む時間に店を開ける必要もあって人手の確保は簡単ではなく、すでに何年も前から外国人スタッフなしで店を回していくのは難しい状況になっています。

 私の会社でも、各店で多くの外国人がアルバイトとして働いているだけでなく、正社員のほとんどが外国人です。日本人と外国人の社員で給与体系に差はありません。

――外国人を雇っていかがでしたか。

 日本人にはない発想を提供してくれます。例えば、果物の皮などについて、出身国の調理法など食品ロスの削減につながるアイデアを出してくれ、会社のコストダウンを実現できました。文化的な背景が異なるため、話していると新たなビジネスのヒントを得られる時もあります。

――協会でも2016年以降、外国人の適正な雇用を推進する活動を率いていますね。

 きっかけは、当時、自社で初めて正社員で雇ったベトナム人女性が、現地のブローカーに払う来日の手数料などとして、100万円を超える借金をしていたことでした。外国人が日本で就労するための制度の不透明さに気づき、その後2年半ほど、ほぼ毎月1回はバックパックを背負ってアジアの国々を回り、外国人労働者の送り出し機関や現地の慣習を調べました。

 各国での調査では、日本貿易振興機構(ジェトロ)や自店にいたその国出身の外国人アルバイトの協力を得ていたのですが、活動に限界を感じたこともあり、協会に協力を求めました。

 業界の成長には外国人の協力が欠かせず、それには適正な雇用を広める必要があります。これまで、大学の教員や弁護士、行政書士らに頼んで勉強会を続けてきたほか、政府にも制度整備を働きかけてきました。

――参院選を前に「外国人が日本の社会福祉制度を食い物にしている」という趣旨の根拠のない主張がSNSなどで出ています。

 外国人の従業員も当然、日本人と同じように税金や社会保険料を払っています。仮に個別の制度に抜け穴があるなら、気づいた時点で、改善する必要があります。ただ、そうした抜け穴を悪用するのは、外国人もいれば、日本人もいるでしょう。外国人だけを標的にして批判するのはおかしいです。

大阪・関西万博のパビリオン「宴~UTAGE~」の前に立つ井上泰弘さん=2025年7月18日、石田耕一郎撮影

――「外国人が優遇されている」と批判し、外国人政策の見直しを唱える人たちがいます。

 長く関心を払ってもらえなかった外国人政策に目が向けられたこと自体は、よいことだと思っていますが、議論が粗いと感じます。候補者には、実態のない「外国人優遇」を批判するのではなく、産業界が直面している現状を踏まえた議論をして欲しいです。

――外国人の社員は社会の雰囲気を、どう受け止めていますか。

 最近、日本語がうまい外国人の幹部社員がSNS上の投稿を見て、「日本では外国人が嫌われているのですね」と相談しにきました。社会の雰囲気がどう変わっていくのか、不安を募らせているようです。

――万博に協会が出展するパビリオンでは、案内スタッフに外国人を配置しています。

 24人の外国人が働いています。うち18人は日本語があまり得意ではありませんが、日本語のうまい指導役の外国人や少数の日本人スタッフがいれば、業務を担えることを実証しようとしています。協会のパビリオンではすでに100万人近くの来場者を迎えていますが、大きなトラブルはありません。スタッフたちものびのび活動しており、来場者にも多様性の利点や強さを感じて欲しいと思っています。

参院本会議で、外国人労働者の「技能実習」に代わる「育成就労」制度の創設を盛り込んだ改正入管難民法などが可決、成立した=2024年6月14日、岩下毅撮影

共有
Exit mobile version