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共同記者発表に臨む岩屋毅外相(右)と世界貿易機関(WTO)のオコンジョイウェアラ事務局長=2025年5月13日午後7時26分、東京都港区、里見稔撮影

 石破茂首相と岩屋毅外相は13日、来日中の世界貿易機関(WTO)のオコンジョイウェアラ事務局長と個別に会談した。トランプ米政権の高関税政策で自由貿易体制が揺らぐ中、双方が合意した成果文書では「不確実性や混乱の時代において、多角的貿易体制の価値は揺るぎない」として、体制の維持・強化の重要性を確認した。

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 岩屋氏はこの日の共同記者発表で、「多角的自由貿易体制は、戦後の日本、そして世界の経済発展を支えてきた。国際貿易をめぐる緊張が急速に高まっているからこそ、WTO体制は一層重要になってきている」と強調。オコンジョイウェアラ氏は現状を「グローバル貿易の歴史の中で最大の混乱」の中にあるとし、日本の協力に感謝した。

 また、首相とオコンジョイウェアラ氏の会談では、WTOの求心力を取り戻す必要性が確認された。「自由貿易の守護者」であるWTOだが、外務省幹部は「今のWTOにはどんどん遠心力が働いている」と指摘する。2018年に第1次トランプ政権が委員選任に反対したことがきっかけで、2019年から紛争解決制度の「最高裁」にあたる上級委員会の委員不在の状況が続いているためだ。また、米国はWTOの最大の資金拠出国だが、第2次トランプ政権は24、25年分のWTOへの拠出金の支払いも留保している。

 こうした中、日本としては今回の会談で、「自由で公正な貿易体制が世界経済の成長にとっては欠かせない」との考えを改めて示す狙いがある。

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