岸田文雄首相が14日、自民党総裁選への不出馬を表明した。歴史的な株の乱高下と物価高に庶民が苦しみ、酷暑・地震・台風といった自然災害のさなか、そして終戦記念日前日での突然の表明。「失望した」「なぜ今なのか」。各地に戸惑いが広がった。
岸田氏は長崎で9日、国が線引きした被爆地域外で原爆に遭って被爆者と認められていない「被爆体験者」の代表らと面会し、被爆者と認めるよう求められて「具体的な対応策を調整する」と答えていた。退陣表明の5日前だった。
岸田氏と面会した被爆体験者の岩永千代子さん(88)は、取材に「会った直後でちょっと失望しています。ただ、首相が面前ではっきり指示を出したのだから、ちゃんと引き継いでほしい」と話した。
面会に同席した支援者で被爆2世の平野伸人さん(77)も「前向きな発言をしていただけに、がくっときた。辞める人があんな風には言わないのでは」と、岸田氏の意図をいぶかった。
もう辞める人には……
被爆体験者は長崎市などを相手取り、被爆者健康手帳の交付を求めて長崎地裁に提訴しており、9月9日に判決がある。平野さんは「判決前に直談判も検討していたが、もう辞める人に会いに行っても……」と肩を落とした。
15日は終戦記念日。被爆地・広島出身の岸田氏は、全国戦没者追悼式で式辞を述べる。
岸田氏の遠戚でカナダ在住の被爆者、サーロー節子さん(92)は、ライフワークとして核廃絶に対処するという岸田氏の言葉を信じ、その取り組みを注視してきたが、「期待はずれでした」と断じた。
「岸田氏は、多くの核兵器を持つ米国が喜ぶことなら何でも『yes、yes』と言うような、本当に追従的な態度を見せてきた」とサーローさん。「新しい政治リーダーには、少なくとも核兵器禁止条約に日本をオブザーバー参加させて、そこに集まる各国の代表と語り合うことを求めます」と話した。(小川崇、長富由希子)
不出馬表明は、南海トラフ地震臨時情報の期間中となった。様々な災害に見舞われ続ける日本。1月の能登地震の被災地はどう受け止めたか。
震災対応は「合格点」。だけど……
石川県輪島市町野町のパート…