娘と同じような被害者を出したくない、事件を風化させたくない――。名古屋市で2007年に起きた「闇サイト殺人事件」で、娘の利恵さん（当時31）を亡くした磯谷（いそがい）富美子さん（73）が5月、愛知県春日井市の県立春日井高校で講演した。かけがえのない家族を失った悲痛な心境を吐露し、命の大切さ、司法に対する思いを高校生たちに語った。
会社員だった利恵さんは07年8月、帰宅途中に名古屋市千種区の路上で男3人に拉致され、現金を奪われ殺害された。遺体は岐阜県瑞浪市の山中に遺棄された。3人はインターネットサイトの「闇の職業安定所」を通じて知り合っており、金目当ての犯行だった。
男たちから口座の暗証番号を教えるように迫られたときに利恵さんが取った行動を、磯谷さんは明かした。5分間のカウントダウンをして包丁で脅され、利恵さんが口にしたのは「2960」というウソの暗証番号。「にくむわ」という語呂合わせだった。
「娘が命がけで守ったお金は…
