子どもの権利に詳しい間宮静香弁護士

 「子どもに何の権利があるのか」――。「こども計画」の策定を目指す津市の市議会の質疑で、市議から子どもの権利を否定する発言があった。

 「子どもの権利条約」は、すべての子どもたちが権利を持つ主体であることを明確に打ち出している。国内では2023年に「こども基本法」も施行され、自治体で条例や計画づくりも進む。こうした中、議員の発言はどのような問題をはらむのか。日本弁護士連合会子どもの権利委員会副委員長の間宮静香弁護士に聞いた。

市民が10年声上げ続けても…

 ――発言をどう受け止めましたか。

 何をどこから説明したらいいだろうと、暗澹(あんたん)たる気持ちになりました。ただ、10年ほど前から子どもの権利の普及啓発に取り組む中で、子どもの権利が理解されていない現状は目の当たりにしてきました。今回は県庁所在地で長く議員を務めてきた方の発言であり、周知の必要性を改めて感じています。

 ――日弁連が「世界子どもの日」に合わせて昨年11月に出した会長声明では、子どもの権利について議員らへの定期的な研修の必要性に言及しました。

 議員立法による「こども基本法」もそうですが、議員らが正しく子どもの権利を理解しているかどうかに、子ども施策の中身は大きく左右されます。

 例えば愛知県豊橋市では、市民グループが10年ほど前から、市の子ども条例をつくるよう求めて市議会に陳情や請願を繰り返してきました。昨年になってようやく請願が趣旨採択されましたが、条例はいまだ制定されていません。

 自治体にとっては、子どもの権利について定めた条例があるかないかの差は非常に大きい。すでに条例がある名古屋市や愛知県瀬戸市では、子どもの権利に関する職員研修を実施するなど、理解を深めようという動きが見られます。条例があれば、子どもの権利に反するような政策も打てなくなります。

 ――「こども基本法」がこども計画の策定を自治体の努力義務とするなど、権利保障に向けた動きは進んでいるようにも見えます。各自治体の取り組みについては、どう見ていますか。

 基本法の制定を機に、子どもの権利に関する研修依頼は明らかに増えました。ただ、なぜこれをやらなければならないのかという議論が深まらないまま「国が法律をつくったから」と進められている節もあり、その点に私は危機感を抱いています。

「大人や先生はどうせ意見を聞いてくれない」

 ――どんな懸念があるのでし…

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