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 子どもを見失った少子化対策――。「保育園を考える親の会」顧問の普光院亜紀さんは、この国の保育政策は少子化対策にからめとられ、子どもの権利の視点を失ったまま進められた、と指摘する。2024年の日本人の出生数が70万人割れとなったいま、保育現場から上がる悲鳴をどう受け止めるべきなのか。

写真・図版
保護者の就労要件を問わず保育所などを利用できる「こども誰でも通園制度」のモデル事業の様子。2026年度から全国で実施される(画像の一部を加工しています。本文とは関係ありません)

 ――著書「不適切保育はなぜ起こるのか」のなかで、この30年あまり、保育政策はもっぱら少子化対策だったと指摘していますね。

 急激な少子化に危機感をもった国にとって、保育は出生率回復のための重要な切り札のひとつでした。

 前年の合計特殊出生率が過去最低となった、1990年の「1.57ショック」以降、仕事と子育ての両立支援、つまり保育や育児休業制度の拡充が急務となりました。92年に育休制度が始まり、94年には、政府の目玉施策として認可保育園の0歳児保育や延長保育の拡充などをうたう「エンゼルプラン」が打ち出されました。

 男女平等意識の浸透とともに、こうした対策の後押しもあって「共働き化」は急速に進みました。その結果、保育園への入園希望が急増し、待機児童問題が深刻化しました。

 「待機児童解消」が政治家の公約となり、保育の基準の緩和策が次々に打たれましたが、「子どもがどう育つか」という視点は欠落していました。コストをかけずに保育施設などの「量」を増やすという施策が続いた結果、保育現場が疲弊し、深刻な保育士不足を招く事態になったと思います。

 ――「量」を増やすなかで問題だったのは、どの点でしょうか。

 面積基準を下回らなければ定…

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