制服や修学旅行の無償化など、子育て支援策を相次いで打ち出している品川区。主導するのは、2022年12月に就任した森沢恭子区長(46)だ。先進的な子育て支援の狙いや、意義は何なのか、聞いた。
――区長就任以降、とりわけ子育て支援に力を入れています。
子どもがいなくなれば、日本を支える人もいなくなってしまう。行政が子育てを全面的に支援する姿勢を示すことが、日本全体にとっても重要だと思います。「子育ては応援されている」と感じてもらいたい。そして、未来ある子どもたちが、生まれた境遇や環境によって選択を阻まれることなく、希望の進路を選択できる社会を作りたいと思っています。
――そのために、育児や教育にお金がかからなくするようにするというわけですね。
- 中学校の制服を所得制限なしで無償化へ 東京・品川区、23区で初
記事後半では、品川区が子育て施策に先進的に取り組む意義を語ってもらいます。
昨年6月にあった「しながわ子ども食堂フォーラム」で、ある中学生が中学入学時、制服を購入するのが難しく、子ども食堂の関係者に探してもらい、お下がりの制服で学校に行くことができたという作文の朗読を聞きました。医師になるという夢があるが、学費がかかるため難しいとも話していました。多くの困っている人たちのために、声を上げてくれたことはすごく大切だと思います。
――経済的な格差が教育の格差につながると言われています。
義務教育とは本来、所得の多寡にかかわらず誰もが等しく無償で受けられるべきものです。民間団体等が実施した実態調査によると、教育にかかる費用の中でも特に制服の負担感が高いとの結果が示されていること、またその中学生の声も受け、給食、学用品に加え、制服の無償化を実施することとしました。さらに、理系の大学生を対象にした所得制限のない給付型奨学金を創設することにしました。中学生は「ちゃんと話を聞いてくれて、声が届くんだ」と言ってくれました。
――経済的な問題以外にも、子育ての負担を指摘する声は少なくありません。
少子化、核家族化、働き方が変化している中で、孤独な子育てをなくしていくためにも、社会全体で子どもと子育てを支えていく「子育ての社会化」が重要です。例えばおむつの宅配を契機に、0歳児がいる家庭とつながりを作る「アウトリーチ支援」などの取り組みも行っています。
――2児の母でもあります。ご自身の経験から出てきたものもあるのでしょうか。
子どもがイヤイヤ期だった頃、スーパーで突然「うるさい」と大きな声で怒鳴られ、衝撃を受けたことがあります。人は誰しも子どもだったはずなのに、子どもに冷たい社会。コロナ禍で出産した知人は、マンションの一室で自分と子供だけという状況に孤独を感じていました。
そういったことから、「おむつ宅配」施策の創設につながりました。困っている人は、自分から困っているとは言いにくいものです。だからこそ、行政がさまざまな支援の網を張り、児童センターでの相談や赤ちゃん訪問など、どこかで行政とつながってほしいと思っています。
――他の自治体の住民からは…