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判決後に会見した原告側代理人の寺西環江弁護士=2025年5月27日午後2時11分、広島市中区、遠藤花撮影

 広島市立工業高校(広島市南区)の校長が「明日から学校に来させないでください」などと生徒の保護者に告げたのは、適正な手続きを経ない処分だったとして、元生徒の男性(19)が市に慰謝料約230万円を求めた訴訟の判決が27日、広島地裁であった。光岡弘志裁判長は学校側の対応について「適切な手順や対応を欠く」として、市に20万円の支払いを命じた。

 判決によると、2021年に入学した生徒は授業中にタブレットゲームをしたり、教師に「死ね」と発言したりするなど、問題行動を繰り返した。翌年9月に校長が生徒の母親と面談。学校の指導の限界を感じ、「明日から学校に来させないでください」と伝えた。これを受け、生徒は転校した。

 校長の発言について、生徒側は「登校させずに家庭での反省を促す『家庭反省指導』であれば、保護者の理解が必要だった」などと主張。一方、学校側は「母親からの同意があったと認識していた」と反論していた。

 判決は、校長の発言は家庭反省指導だったと認定した上で、発言の趣旨や反省期間などを伝えず、指導を受け入れるか判断するための必要な情報を提供しなかったと指摘。「教育を受ける機会の制限との関係で、必要な配慮を著しく欠いた」と違法性を認めた。

 判決後、元生徒は「もう、通っていた高校にいけないと聞いたときは、本当にショックでした。そこから、私の生活は大きく変わってしまいました。私の高校生活を取り返すことはできませんが、これを機に、学校による不適切な対応が少なくなればいいと願っています」とのコメントを出した。原告の代理人は「こうした違法な措置は多くの学校でとられているのではないか。教育委員会は各校に指導してほしい」と会見で話した。

 市教育委員会の担当者は取材に「主張が認められず残念だ。(問題行動がある)生徒との協議にも影響が出てくる」と述べた。

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