(20日、第97回選抜高校野球大会1回戦 山梨学院5―1天理)
「勝った気がしない」
山梨学院の吉田洸二監督がそう振り返るのも無理はない。投手陣が計10与四死球。大量失点してもおかしくない流れを何度も食い止めたのは、背番号「2」だった。
「自分が崩れると、周りも崩れる」と捕手の横山悠。二回、先発の津島悠翔が一回に続き、先頭に四球を出した。続く打者にも四球。内心は横山も「また出たか」と困った。
もちろん態度には出さない。次打者のバントを素早く拾い、三塁封殺。その後2死二、三塁で好打者の赤埴幸輝を迎えると、タイムを取り津島のもとへ。心を落ち着かせ、この回を無失点に抑えた。
投手が制球を乱すたび、不安げな表情を見せるたび、マウンドへ向かう。「守ってやるから」。守備の全球に関わる捕手は「大変」と感じつつ、「チームを乗せていけるから、一番やりがいがある」とも思う。
今春、一塁手から本職の捕手に戻った横山の姿勢に呼応するように、昨秋の関東大会2試合で6失策だった守備陣は無失策。ピンチの連続を1失点で守り切った。
一方で、天理は捕手の交代で空気が変わった。先発の石井翔太が三回に頭部に死球を受け、四回から交代。この回に逆転を許し、藤原監督は「痛かった」。2番手の豊田竜都も盗塁を阻止するなど見事にカバーしたが、微妙に動いた流れをつかまれた。
試合を左右するのは、長打やビッグプレーばかりではない。捕手が「扇の要」と言われるゆえんを見た。