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写真・図版
森先一貴さん=東京都文京区、筒井次郎撮影

 はるか旧石器時代から縄文時代へとつながる先史時代研究は刻々と変化を遂げている。考古学の顕著な業績に贈られる浜田青陵賞(大阪府岸和田市、朝日新聞社主催)に決まった東京大大学院の森先一貴(かずき)准教授(45)もまた、その激動の最前線に身を置く。スリリングな学究の日々について聞いた。

 文字記録などない大昔、特に旧石器時代の研究対象は、ほぼ石器だけ。でも、「だからこそ考古学の独壇場。自分たちの分析で人類史にアプローチできる。それが魅力」という。

 新たな発見や研究の深まりで通説が塗りかわるのも、この世界の常だ。たとえば縄文時代の到来を象徴する土器はかつて、1万年ほど前に最終氷期が幕を閉じて環境の変化とともに出現したとされてきた。ところが近年、土器の誕生は1万6千年ほど前にさかのぼり、氷期に食い込む。かつての常識はもはや通用しない。

 同様に「定住」の始まりも揺れる。列島内で人間が同じ所に住み始めたのは竪穴住居が出現する縄文時代とするのが一般的で、それまで人々は遊動生活をおくっていたとされる。ところが森先さんは、一時的な「定住」の兆しは旧石器時代からあった、というのだ。

 「たとえば種子島(鹿児島県…

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