Smiley face

【動画】155ミリ榴弾砲を用いた訓練を行う陸上自衛隊員=矢島大輔撮影

写真・図版
陸上自衛隊の火砲「155ミリ榴弾砲」の射撃訓練=2024年10月9日、静岡県の東富士演習場、矢島大輔撮影
  • 写真・図版

 長年の射撃訓練で難聴になったのは、装備品や健康診断が不十分だったからだ――。陸上自衛隊の現場幹部の男性がそう訴え、国に慰謝料を求める裁判が14日、札幌地裁で始まる。男性が「まずはこの問題を知ってほしい」という現状とは。

 原告は、陸自北部方面総監部の1等陸尉中村俊太郎さん(50)。1993年に入隊し、射撃や装甲車の操縦など激しい騒音が伴う任務に当たってきた。

 聴力の異常に気づいたのは97年ごろ。射撃訓練を監督した2021年に症状が悪化し、その後、両耳の難聴が公務災害と認定された。

 中村さんによると、隊員に支給される耳栓は粗末なもので、84ミリ無反動砲の射撃訓練では「日常生活で聞いたことがないほど」という大きな音と衝撃にさらされた。訓練後は「プールで水が入ったような耳の閉塞(へいそく)感」や耳鳴りが続いたという。

 隊員は訓練中、号令に従って動作するため、耳栓が外れてもつけ直すことにためらいがあった。騒音が聴力に与える危険性も、隊内では十分に共有されていないという。

 訴状では、国が隊員に対する適切な予防や対策をせず、安全配慮義務を怠ったと主張。遮音性能の高い耳栓を十分に支給せず、耳栓の着用を徹底するよう啓発しなかった上、必要な聴力検査の実施を怠ったとして、慰謝料など約9200万円の支払いを求めている。

 難聴の自覚症状がある隊員を他にも多数知っているという中村さん。「若い隊員のためにも声を上げないわけにはいかなかった」

 実際の訓練はどういうものか。

 「射撃用意、撃て」…

共有