頼れる身寄りがなく老後を迎えるにあたって、葬儀など自分の「死後」に履行される契約を結ぶ人たちが増えている。安心して死ぬためには――。
契約後に求められた「遺言書」
「遺言書の作成が必要です」
2022年夏、身元保証など「高齢者等終身サポート事業」を行う事業者と葬儀や遺品整理といった「死後事務委任」の契約を結んだ男性(72)は、その数カ月後にこう言われて戸惑った。遺言書の作成は、任意だと思っていたからだ。契約金の約150万円は、すでに支払っていた。
遺言書の内容も事業者から指示された。「預貯金を死後の遺品整理などに使い、残った分を息子に相続する」。遺言執行者には、事業者のスタッフがなる、という説明にも不安を感じた。
死後のことは、自分では確認できない。本当に全てをこの事業者に任せてもよいのか。遺言は、適切に執行されるのか。預貯金を使い込まれてしまわないだろうか――。
コロナ禍きっかけに将来を不安視
男性は一人暮らし。「自分が死んだら、誰が後始末をしてくれるのだろう」。数年前から死後のことを考えるようになった。
きっかけはコロナ禍だった。出歩けなくなり、部屋に1人でいると考え事をする時間が増えた。
離婚し、妻子とは長年音信不…