野村良太の山あり谷あり大志あり:14
2022年に前人未到の北海道分水嶺(ぶんすいれい)積雪期単独縦断を達成し、28歳で植村直己冒険賞を受賞した道内の山岳ガイド野村良太さんのコラム(紙面は北海道支社版掲載)です。
7月。今年も夏山ハイシーズンに突入した。今夏は登山ガイド業の合間をぬって、自分の遠征計画を立てる慌ただしい数カ月間となりそうだ。来春、インド洋からエベレスト登頂への挑戦「シー・トゥー・エベレスト」の本番準備で、9月から1カ月、これまたヒマラヤ山脈のマナスル(標高8163メートル)への遠征を計画しているのだ。
夜中に起きてこの原稿を書きながら、どうして僕は、こと登山に関して、いつも詰め込んだスケジュールになってしまうのだろうかと思う。そこには「山はタイミングを失うと意外と逃げてしまうよ」という意識があるのだろう。
登山をしていて「山は逃げない」という言葉を聞いたことがない人はいないはずだ。僕も悪天候や体調不良で計画を断念せざるを得ないとき、この言葉に慰められた経験は少なくない。
だが、本当にそうだろうか。
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今日はこれから大雪山系の沼…