(29日、第106回全国高校野球選手権東東京大会決勝 関東第一8―5帝京)
今年5月、夕暮れ時のグラウンド。ベンチ前に集まった3年生の前で、帝京の篠原賢悟(2年)は同級生の野球部員と2人で頭を下げた。
「応援団長と副団長をやらせて頂いてよろしいでしょうか」
3年生は笑ってくれた。歴史ある帝京野球部で2年が応援団長になったのは初めてのことだ。
小さい頃から、「帝京魂」が好きで、ストライプのユニホームに憧れた。念願叶(かな)って入学した1年前の夏、スタンドで先頭に立っていた3年生の応援団長が輝いてみえた。「メンバーに入れなくても、あんな風に目立てるなんて。チームに貢献できるようになりたい」
応援団長になると、練習後、家の近くの河川敷で応援歌のソロパートを大声で練習した。「応援が良くなかったから負けた、といわれるのがこわくて」
部室にあったずっと使われていなかった大きいメガホンと手袋、黄色くて長いはちまきが「応援団長の三種の神器」。はちまきにはもちろん、「帝京魂」の文字。一番仲がいい先輩に書いてもらった。この夏はあっという間だったけど、幸せな時間を過ごすことができた。
13年ぶりの甲子園は、あと一歩のところで逃げていった。自分たちの代は、もう始まっている。「3年生の思いを引き継いで、絶対に甲子園に行く」。応援団長は今日で引退。今度は、選手として叶えてみせる。=神宮(野田枝里子)