MASAYUKIさんの作品「なぞのマンション」。たくさんの数字の中にハートマークが交じっている=2025年1月19日、新潟市新津美術館、茂木克信撮影

 「自由な世界に、ぜひ触れてほしい」。新潟市美術館特任館長の前山裕司さん(71)は、そう語る。前山さんが監修した展覧会「あふれる思い ふれる気持ち」は、思わず近寄って凝視したくなる点描画や、コーヒー豆を下地にした作品など、障害のある市内のアーティスト12人による個性豊かな作品66点が並んでいる。

 初日の19日、会場の市新津美術館(同市秋葉区)でギャラリートークが開かれ、前山さんが各アーティストや作品について話した。

 出品者の一人、柳生田光利さんは水性ボールペンによる点描が持ち味。前山さんは「発想が豊かで色彩が深い」と評し、作品「EBI」について「海の向こうからエビが出てくる感じが、ちょっと度肝を抜かれるくらい強烈」と述べた。

 「近寄って見てほしい」と勧めたのは、たろきちさんの作品「夜空の下で ~寿司(すし)折りを持った父~」。フェルトペンによる小さな丸で描き込まれていて、「かわいい世界とおじさんの世界が同居していて、とても楽しい」と印象を語った。

 画用紙以外に表現する人も。本間祥大(よしひろ)さんは、通っている施設が運営するコーヒー店から出る廃棄豆にアクリル絵の具で色を付けた。コーヒー豆に再び命を吹き込んだ作品は、店が販売するドリップバッグの商品パッケージに採用された。

 ほかにも、卓(suguru)さんは、おもちゃのブロックで自らの顔と頭の中を表現。栗宇(くりう)真白(ましろ)さんは、透明なビニール傘にフェルトペンで色とりどりのまだら模様を描き込み、楽しい作品を生み出した。

 前山さんは「鑑賞を通じて、自分たちの感性が普段どれだけ縛られているかを感じてほしい。バラエティーに富んだ作品たちの中から、お気に入りを探すのも楽しいです」と話す。会場では、柳生田さんやたろきちさんら一部のアーティストの制作風景を動画で紹介している。

 同美術館での展示は30日まで(27日は休館)。2月8~16日はイオンモール新潟亀田インター(同市江南区)、同月20日~3月2日はゆいぽーと(同市中央区)にそれぞれ会場を移す。観覧はいずれも無料。

 関連イベントとして、同美術館で今月25日午後1時半から、前山さんが障害者アートについて語る。ゆいぽーとでは2月20日午前10時から、出展したアーティストが作品について語る催しが開かれる。ともに無料で、事前申し込みは不要。問い合わせは、同市文化政策課(025・226・2624)へ。

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