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弁護士の遠藤元一さん

 フジテレビの第三者委員会が報告書を出してから2カ月。企業の不祥事や第三者委に詳しいプロは、その内容をどう評価しているのか。弁護士の遠藤元一さんは、短期間でよく調べたとしつつ、弁護士だけによる調査の限界が垣間見える内容だと厳しく指摘します。

事実認定は及第点以上

 ――第三者委の報告書をどう評価していますか。中居正広氏側から性暴力の認定などをめぐり反論も出ました。

 「第三者委の回答には、中居氏側が最終的に守秘義務解除に応じなかった経緯が書かれており、説得力があると思います。報告書が短期間でよくまとめ上げたものであるという印象は変わりません。ただ、高評価をするには足りない点があるように思います」

 「第三者委の調査報告書というのは一般的に、①事実認定、②原因分析、③再発防止に向けた提言、という三つの要素で構成されます。①の事実認定については及第点以上、しかし②の原因分析と③の再発防止策の提言については非常に手薄で、273ページある報告書のうちそれぞれ8ページと5ページしか割けていません。具体的な内容にも乏しいという印象です」

 ――では、まず①の事実認定について。どのあたりが「及第点以上」ですか。

 「性暴力があり業務の延長線上で発生した事案であると認定したこと、中居氏の利益のために動いたフジ幹部がいたことや類似のハラスメント事案をあぶりだしたことなどです。多くの弁護士を投入し、調査範囲を広げて調べた成果でしょう」

 「ただし、不十分な点も散見されます。第三者委が忖度(そんたく)したのか、ただ単に時間切れだったのかは不明ですが、たとえばフジ・メディア・ホールディングス(FMH)は親会社としての監督責任を果たさなかったと端的に認定・評価すべきだったと思います。今回の件でFMHの経営陣が動いたのは、港浩一前社長がテレビカメラを追い出して閉鎖的な記者会見を行い、広告主が撤退する動きが明確になり始めてからでした。親会社の初動はあまりにも遅すぎます」

 「社外取締役も、メディアの報道があった時点で調査・確認を求めるべき義務を怠っていた疑いがあります。なぜ役割を果たせなかったのかもっと詳しく調査し、事実認定と評価を行うべきだったはずです」

根本原因に迫れず

 ――では次に、②の原因分析が不十分だという意味は。

不祥事が発覚した企業が、自主的・自律的に再生を果たすのは難しい。だからこそ第三者委員会の原因分析と提言が欠かせないのにーー。そんな観点から、記事の後半では遠藤さんが報告書をさらに詳しく解説します。

 「たとえば経営陣に人権意識…

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