(10日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 北海7―10東海大熊本星翔)
「後ろにつなげ」
八回裏。北海の佐藤瞭磨主将(3年)は諦めていなかった。2死から盗塁と四球でつくった好機で9番打者が適時打。先頭の佐藤主将に打席が回ってきた。3球目、外角直球に合わせた打球は中前適時打に。後ろにつないだ。この回、3点を返した。
「『弱い代』と言われていた」
佐藤主将は自分たちの学年をそう振り返る。1年時から試合に出ていた選手は少なかった。現チームが始動した昨秋の全道大会。勝てば春の選抜大会出場が確実となる決勝で東海大札幌に負けた。力不足は自覚していた
長く苦しい冬。悔しさを練習にぶつけた。春の甲子園を逃した分、基礎練習の期間は増えた。延々と繰り返されるシャトルラン。筋力を使い果たすまで追い込むウェートトレーニング。途中で心が折れたり、練習後に立ち上がれなくなったり。仲間たちに佐藤主将は「目標は甲子園だぞ」と、声をかけ続けた。
全国に名が通るような、ずば抜けた選手はいない。たどり着いたのは、助け合いながら戦うチーム。層の厚い投手陣による継投や、犠打を多用し手堅くつなぐ野球で、春季大会を優勝。勢いのまま2年ぶりの夏の甲子園の切符を手にした。
佐藤主将自身はこの1年、右肩のけがを繰り返し、「常に100%ではやれていなかった」と話す。しかし、「その時の100%でできるように心掛けていた」という。
この日、佐藤主将は先頭打者として3打数3安打、2四球とすべての打席で出塁した。しかし、チームは終盤の粘りも届かなかった。試合後、佐藤主将は「主将としてチームを勝たせられなかった」と悔し涙を見せながらも、「後輩たちがまた来年、甲子園に戻り、日本一になってくれる」と振り絞った。
思いをつないだ。