連載「閉じゆく世界 トランプ関税の衝撃」
トランプ米大統領の高関税政策が世界を大波乱に陥れています。超大国が内へと閉じていく中、世界はこのまま危機に向かうのか。人々の暮らしへの影響は。トランプ関税がもたらす衝撃を多角的に掘り下げます。
40億円を投じて新工場できた矢先に…
影響は軽微――。それはほんの2カ月前の判断だった。
大手光学レンズメーカーのタムロン(さいたま市)は、トランプ米大統領の関税政策の影響を今年2月時点で、こう評価していた。
トランプ氏が唱えていた関税措置は、専らメキシコと中国が取りざたされていた。米国に輸出する主要製品の生産を、中国からベトナムに移してきた同社には、その戦略が奏功するという見方もあった。
今年1月、約40億円を投じてベトナムに2カ所目となる新工場を稼働させた。米中摩擦が高まったトランプ氏の1期目以降、生産量の増加や、台湾有事や対中関税の引き上げといった「地政学リスク」などを鑑みて、中国からベトナムに生産を移す戦略を描いてきた。
日本、中国にならぶ「第3極」と位置付けたベトナムで第2工場が2028年にフル稼働すれば、グループの生産能力は24年と比べて2割増える。そうなれば、ベトナムでの生産割合はこれまでの25%から45%に上がり、米国による対中関税リスクも低減できる。
しかし、目算はくるった。
トランプ米政権は5日に「相…