(5日、第107回全国高校野球選手権愛知大会1回戦 愛産大三河2―1天白)
同点の九回裏。2番手で登板し、六回から無失点投球を続けていた天白の背番号10、海原(かいばら)孝成投手(3年)はサヨナラのピンチを背負った。
1死二塁でなおも強打者が続く打順。だが、伝令から「敬遠はしない」と告げられた。マウンド上の左腕も同じ気持ちだった。「絶対に後ろには倒れない。最後まで前へ、攻め続ける」
チームはこれまで練習時間のほとんどを守備に割き、昨秋は東邦を破るなど地力をつけた。この日も無失策の堅守で粘り、甲子園出場経験のある愛産大三河と互角の展開。頼もしい仲間が後ろにいるのに、ひるむわけにはいかなかった。
2死までこぎつけ、最後の打者にも直球で挑んだが、うまく当てられた。三遊間に転がったゴロを遊撃手の鈴木万幌(まほろ)選手(3年)が必死につかんだが、送球が間に合わずセーフに。サヨナラ負けを喫した。
泣き崩れる鈴木選手に、海原投手は「飛んだところが悪かった。万幌は悪くないよ」と声をかけた。何度も守備に救ってもらったからこそ、本心から出た言葉だった。
試合後も「これから先、この試合を思い出しても、きっと後悔しない」と語った海原投手。最後まで、すがすがしい表情で夏を終えた。