小松大谷―創成館 九回表小松大谷2死、宮下を三振に打ち取り試合終了、笑顔を見せる投手森下=伊藤進之介撮影

(5日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 創成館3―1小松大谷)

 創成館のエース森下翔太は「心配性」だ。開幕戦で対戦する小松大谷の3番、左のスラッガー田西称を恐れていた。「どこに投げても、打たれそう」。だからこそ最も警戒し、攻めた。

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 一回、1死二塁での第1打席。初球、胸元の厳しいコースへ143キロを投じた。相手はファウルで応じ、「直球狙いかも」。それでもしつように内角を攻め、遊ゴロに打ち取った。

 自らのバットで同点とした直後の三回、波に乗った。先頭で迎えた田西に対し、初回の裏をかくように3球続けて変化球。中飛に打ち取る。五回は再び内角攻めでフルカウントとし、「ぶっつけ本番」の外に逃げるフォークで空を切らせた。

 この日4打数無安打に封じられた田西は「内を攻めてきて、外で勝負された」。身長が10センチ近く高い強打者に、森下が臆さず投げ込んだ内角球の残像が、生きた。

 エースになったのはこの夏の長崎大会から。昨夏の甲子園はベンチ入りできず、同級生右腕の活躍がうらやましかった。新チームになった秋以降も、出番は少なかった。

 春先、ひらめいた。左足を上げるのと同時に軸足のかかとを数センチ浮かせると、「体を目いっぱい使える感じがした」。夜遅くまでシャドーピッチングを繰り返し、一躍最速149キロ右腕に。長崎大会は35回超を力投し、3連覇に導いた。

 入学したころは120キロそこそこだった右腕が、ナイターの涼しさに背中を押され、9回13奪三振、1失点完投。「身長がちっちゃくても、強い気持ちを持ってやればしっかりできる」。勇気と工夫の尊さが詰まった153球だった。

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