「一日も早い復興を」
能登半島地震の被災地を歩くと、多くの人からこの言葉を聞く。取材ノートにも同じ言葉がいくつも残っている。
道路や水道や住宅が元に戻り、不自由な生活を脱してほしい。私の願いも一緒だ。
だが、石川県輪島市で4月に開かれた「のと未来トーク」で、意外な声を聞いた。
「急いで修復するのが本当に良いのか。ゆっくりと自分たちの手で直したい」
声の主は白尾真紀子さん(40)。市内の白米(しろよね)千枚田を維持・管理する白米千枚田愛耕会で広報を担当する。
日本海のそばにある千枚田は、2011年に国内初の世界農業遺産に指定された「能登の里山里海」の象徴的な存在だ。
海原を望む高低差約50メートルの傾斜地に1004枚が広がる景色は、元日の地震で一変した。
亀裂が何本も走り、あぜや水路が壊れ、何枚もの田んぼが崩れた土砂にのまれた。
白尾さんが「自分たちのペースで」と思い始めたのは3月のことだという。
千枚田の復旧作業を建設会社…