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千枚田の全景。右手前が稲穂の実る田んぼ=2024年8月15日、石川県輪島市白米町、樫村伸哉撮影
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 「一日も早い復興を」

 能登半島地震の被災地を歩くと、多くの人からこの言葉を聞く。取材ノートにも同じ言葉がいくつも残っている。

 道路や水道や住宅が元に戻り、不自由な生活を脱してほしい。私の願いも一緒だ。

 だが、石川県輪島市で4月に開かれた「のと未来トーク」で、意外な声を聞いた。

 「急いで修復するのが本当に良いのか。ゆっくりと自分たちの手で直したい」

 声の主は白尾真紀子さん(40)。市内の白米(しろよね)千枚田を維持・管理する白米千枚田愛耕会で広報を担当する。

 日本海のそばにある千枚田は、2011年に国内初の世界農業遺産に指定された「能登の里山里海」の象徴的な存在だ。

 海原を望む高低差約50メートルの傾斜地に1004枚が広がる景色は、元日の地震で一変した。

 亀裂が何本も走り、あぜや水路が壊れ、何枚もの田んぼが崩れた土砂にのまれた。

 白尾さんが「自分たちのペースで」と思い始めたのは3月のことだという。

 千枚田の復旧作業を建設会社…

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