今年1月の能登半島地震から3カ月が経ち、能登半島北部の4市町では多くの診療所が通常診療を再開した。一方、インフラの復旧が遅れる中、地元を離れる被災者も少なくない。人口流出が懸念される被災地で診療所が今後果たすべき役割とは。現地の医師2人に聞いた。(聞き手・藤谷和広)
――発災直後の状況は。
地震の翌日から薬の処方をしました。ただ、患者さんのカルテが入っていた棚が倒れ、停電も続いていました。どこに何があるかわからず、お薬手帳を持っていない人の処方歴が確認できない状態でした。パソコンをもって金沢まで行き、患者さんのレセプト(診療報酬明細書)を全部印刷して戻りました。
問題は人手不足です。3人いた看護師は地震後、市外に避難するなどして、誰も復帰できませんでした。
通常に近い診療を再開できたのは、2月中旬。JMAT(日本医師会の災害医療チーム)やジャパンハート(医療支援のNPO法人)に看護師を派遣してもらいました。4月上旬からは、新たに地元の看護師も働いてくれています。
――患者さんの様子に変化は。
血圧が上がっている人が多いです。できるだけ診察の時間をとり、「眠れていますか」「食事はどうしていますか」と聞くようにしています。久しぶりに受診する人には、避難先で薬を飲み続けているか確認し、必要があれば検査をしたうえで薬を出しています。
珠洲はここ数年、地震が続いています。昨年5月にも大きな地震があり、ようやく立て直して新年を迎えた矢先。精神的なダメージは相当大きいと感じます。
そして、これで最後とも思え…