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パリ五輪の柔道混合団体決勝で攻める角田夏実(右)=柴田悠貴撮影
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 7月29日、飛行機の乗り継ぎのために降り立ったカタールの空港で、加藤博剛のスマートフォンが震えた。

 パリ・オリンピック(五輪)の柔道女子48キロ級で金メダルに輝いた角田夏実(SBC湘南美容クリニック)からのメッセージだった。

 「(女子57キロ級フランス代表の)シシケの映像、見ておいて」

 現役時代、全日本選手権で優勝経験のある加藤は、角田の技術指導や戦術立案を担うブレーンだった。2日前にパリの観客席で勝利を見届け、「仕事は終わった」と帰国の途についた矢先だった。

 「夏実、団体戦に出るんだ」

 角田は個人戦金メダルの余韻もそこそこに、女子監督の増地克之から「団体戦の準備をしておいてくれ」と言われていた。試合まで7日間。疲労回復を図りつつ、「目立たないように」調整した。日本にいる加藤と連絡をとりながらシシケの分析、対策を進めた。

 柔道の国別混合団体は男子3人、女子3人の計6人で争う。男子は73キロ以下、90キロ以下、90キロ超から1人ずつ、女子は57キロ以下、70キロ以下、70キロ超から1人ずつを選ぶ。

 五輪での実施は2021年の東京大会から。初代王者を決める決勝は日本とフランスの顔合わせになった。

 フランスは女子70キロ以下クラスで、63キロ級金メダルのアグベニェヌを抜擢(ばってき)。70キロ級金メダルの新井千鶴が敗れ、日本は流れを失った。

 「団体戦は想定していないことをやられると、先手をとられる」。増地はパリでの雪辱を胸に、対フランスのオーダーを3年間、考え続けた。

 女子の57キロ以下のクラスに2階級下の角田をあてるプランは23年末から温めていた。日本代表の舟久保遥香(三井住友海上)はシシケと相性が悪く、パリ五輪の個人戦でも一本負けしていた。

 想定通り、決勝は再びフランスとの対戦となった。

 増地がオーダーを決めたのは試合の2時間前。担当コーチは舟久保を推したが、角田の起用を決断した。

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