うたをよむ 北大路翼
朝日新聞歌壇俳壇面のコラム「うたをよむ」に、「加藤楸邨の百句」の著書がある俳人・北大路翼さんが寄稿。楸邨の「憤り」の句を読み解きます。
七月三日は加藤楸邨の忌日であった。生きていれば一二〇歳、明るい兆しが見えない今の時代を楸邨はどのように感じ、どのように詠んだのだろうか。
楸邨の俳句の根底にあるのは「憤り」である。戦争の体験が大きいだろうが、それだけでなく、すべての世の中の不合理、不条理を憎んでいた。
蟇(ひきがえる)誰かものいへ声かぎり
昭和十四年作。第二次世界大戦が始まった年である。言論が制限されている中でも、蟇のように醜くてもひたすら声を出し続けようと。優れた作品には人を奮い立たせる力がある。
バビロンに生きて糞(ふん)ころがしは押す
こちらはフンコロガシに託し…