東西冷戦の時代、日ソ合作映画「モスクワわが愛」で主役のバレリーナ百合子を演じました。広島出身の被爆2世で、映画のラストでは白血病と闘うという設定です。
バレエは生命力あふれる芸術です。踊る時、愛を告げられた時、別れの時、広島の明るく強い精神と、重く悲しい影を意識しました。
青春映画として、合作映画として、2人の男女の心の触れ合いと同時に、核の恐ろしさ、戦争のむなしさが静かに伝わることを願い、役を創造しました。
大切な恩師のお一人、劇作家の田中千禾夫（ちかお）先生は、被爆地・長崎のご出身です。千禾夫先生の作品には、反戦、平和の思いが、地下の水脈のように流れています。
その中に、被爆地・長崎を主題にした「マリアの首」があります。作品の中で、「立ち上がれ、あたしよ」と自分自身を鼓舞するセリフがあります。今でも読み返すと、長崎の心が胸に染み入ります。長崎のご出身というのをとても大切にされていた。浦上天主堂には先生の文学碑があり、私もお訪ねしました。
2010年まで10年間、日…
