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復興庁のホームページから

 東日本大震災で被災した人が、長い道のりを経て生活やなりわいをどう立て直したか。復興庁が計48人から聞き取った証言集を、ホームページで公開した。政府レベルで被災者一人一人の経験を記録して残すのは、異例のこと。「次」への備えのヒントが、たくさん盛り込まれている。

 東北大災害科学国際研究所の佐藤翔輔准教授、岩手大地域防災研究センターの福留邦洋教授が協力。2人のつてを頼って岩手、宮城、福島3県から証言者を選び、インタビューは佐藤さんが中心になって2023年~24年に行った。復興庁の官僚も同席。被災者はイニシャルで紹介されている。

 浮かび上がるのは、情報の大切さ、人と人のつながりの大切さだ。

 「情報がないと、申請期間が終わった後に制度の存在に気付いたり、半年待てば制度が使えたのに、頑張って先に再建したため使えなくなったり……」(K・Kさん)。「自分から情報を取りに行けばよかった。私は個人事業主で商工会に入っていなかったが、加入していた人たちは早くから情報を得ていた」(N・Tさん)。「1人でじっと閉じこもらず、何かあったら『助けてくれ』と手を挙げないと駄目」(A・Hさん)。

 表だっては語られにくい、「被災地あるある」も登場する。

 「震災後に(両親と)世帯分離したので、生活再建支援金や義援金は全部両親に入り、われわれには一銭も入らなかった」(I・Sさん)。「役場に相談した上で家の設計に入ったが、後日、新しい道路が私の土地にかかると知らされた。ちゃぶ台をひっくり返そうかと思ったが、地域の自治会長をしていて、やむなく従った」(S・Kさん)。

 インタビュアーを務めた佐藤さんは、「被災者は『かわいそう』とみられがちだが、一人一人が困難をのりこえる様々なすべ、コツを持っていたことに、圧倒された」と話す。報道や研究者による調査で、発災直後や避難生活の証言は多数残されているが、今回は震災から10年余りにわたる個人史を記録した点でも、意義があるとする。

「かわいそう」とみられがちだが、違っていた

 復興庁のキャリア官僚・藤本…

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