日本記者クラブで会見する中満泉・国連事務次長=2023年8月、東京都千代田区

 2022年のウクライナ侵攻、23年のパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃と、世界各地で戦乱が続いています。この現状に、子どもたちとどう向き合っていけばいいでしょうか。国際連合事務次長・軍縮担当上級代表の中満泉さんに話を聞きました。

歯がゆさ通り越して怒りに近い気持ち

 ――戦禍が各地に広がっています。

 21世紀にこんなことが起きるとは、私たちも想定していませんでした。国連の職員も非力、無力で、ものすごく歯がゆい。歯がゆさを通り越して、怒りに近い気持ちもあります。

 現場には、命の危険にさらされながら活動をしている同僚もたくさんいます。

 あまり報道されませんが、スーダンでも度重なる紛争により飢餓が深刻で、飢饉(ききん)に近い状況になっています。

 本当に私も苦しい。

 20代の娘たちからはよく「こんなひどい世界を、そのまま私たちの世代にバトンタッチされては困る」と言われます。

 時間はかかりますが、解決策を探っていくしかないと思っています。

 いま日本にも、世界にも、社会のいろんなところで不公平・不平等があります。それをどうやって防ぎ、どうしたら変えられるのか。自分たちの生活と結びつけて考えることから、平和はつくられるのではないかと思います。

 ――日本では8月15日の終戦記念日が近づくと、子どもが平和や戦争について知る機会が増えますが、それによるトラウマを心配する声もあります。何をどう伝えたらいいでしょうか。

 「怖いな」だけで終わらないようにしないといけないですね。それぞれの子どもの精神発達の状況は周りの大人が一番よくわかっていますから、その映像や写真などが、その子にとってどう感じられるかを見極めた上で、判断したら良いのではないでしょうか。

 ただ、戦争について理解するだけでなく、「衝撃的に感じる」ということも重要だと思います。

「こんなことがあって良いはずがない」

 私も、小学4年生になって初…

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