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オーディション番組 アイドル誕生の「沼」

 「○○ちゃんに投票してくださった方からそれぞれ1人に以下を提供します。 資格取得コンサル ES添削 ダイエット法」

 昨年12月、こんなポストがX(旧ツイッター)に投稿された。

 まるで選挙への支援を呼びかけるような投稿だが、そうではない。アイドルオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」(通称「日プ女子」)に出演している、「推し」の参加者をデビューさせるため、ファンが投稿したものだ。

 番組は、韓国発祥のシリーズの日本版で、2023年秋にオンラインで配信された。101人の少女が歌やダンスなどの課題をこなしながら競う様子が放映され、視聴者は毎日、そのうちの気に入った参加者にネット投票できる仕組みだった。

【連載】オーディション番組 アイドル誕生の「沼」

若い世代を中心とした熱狂的な応援活動が話題となっているオーディション番組。「普通の子」がアイドルになる様子が人気を呼ぶ一方で、ファンによるSNS上での激しい誹謗中傷など、問題点も指摘されています。番組出演経験がある髙田健太さんや矢吹奈子さんへのインタビューなどを通し、盛り上がりの光と闇を追います。

 冒頭のXのポストを投稿した、兵庫県に住む会社員の女性(25)は元々、旧ジャニーズ事務所(現SMILE―UP.〈スマイルアップ〉)に所属していた男性アイドルや、宝塚歌劇団の「推し活」をしていた。

 しかし昨年、性加害問題や劇団員の死亡問題などが相次ぎ、どちらも活動の場が縮小したり、公演数が減少したりした。年150万円ほど推し活に費やしていたという女性は「何のために働いているんだろうと思うほど」落ち込む日々が続いた。

 そんな中はまったのが、同番組。宝塚歌劇団に入るための試験に挑戦したことがあるという参加者が目にとまった。試験には落ちたが、あきらめずがんばり続ける姿を見て、応援したいという気持ちが強くなった。

 番組が進み、挑戦者の数が絞られていくにつれ、推しを周りに広める「布教活動」にも熱が入っていった。冒頭の投稿には多くの反響があり、実際に15人ほどが毎日の投票に協力してくれたという。

 女性は、番組にはまった理由をこう話す。「いとこの女の子ががんばっている、みたいな感覚と、自分好みのアイドルを生み出せるかもしれない、という楽しさがあって、応援したいという気持ちが強くなりました」

 デビューメンバーを決めるための最終回の投票数は1千万票に及び、若者を中心にした熱狂ぶりは「社会現象」とさえ言われた。得票数の多かった11人は4月、「ME:I(ミーアイ)」としてデビューした。

「アイドル誕生劇」に魅了されたファンたちは、連帯し応援活動を行うようになっていきます。一方で、出演者の一人は「極限状態だった」という番組の実態を語ってくれました。

「アイドル活動に参加できるという快感」

 「ME:I」が3月に開いた…

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