山梨県立青洲高校(市川三郷町)の商業研究部の生徒たちが全国高校生徒商業研究発表大会で優良賞を受賞した。昨年度は最優秀の文部科学大臣賞に輝いた。いずれも地元の伝統産業の和紙にかかわるもので、研究成果を一過性で終わらせたくないという思いが連続受賞につながった。
同大会は、商業に関する課題解決の研究成果を発表する。同部の生徒たちは昨年度、生コンプラントから出る排水を使った和紙でサウナハットをつくった。廃棄物に付加価値を加える「アップサイクル」の取り組みが評価された。山梨県のふるさと納税の返礼品にも選ばれ、新聞やテレビで取り上げられたが、販売できたのは1年間で三十数個にとどまった。
「注目されるのに売れない」。そのジレンマを埋めるため、他校の生徒が開発した商品のその後を調べた。関東地方の商業系高校33校の7割以上がせっかく始めた商品づくりや販売をやめていることが分かった。担当教諭の異動が要因と推測された。
継続的に販売できる仕組みをつくるために注目したのが「推し活」だ。自分たちの活動に共感する支援者を募り、口コミで製品の良さを広めてもらう戦略を立てた。
オンラインで支援者との「ファンミーティング」を開き、提案されたアイデアをもとに、和紙を使ったランタン(携帯用照明具)をつくった。
その後もファンの声を聞いて、和紙の風合いが生かせるように電球の色を変えるなど改良を重ねた。完成したランタンは昨年7月からの3カ月でサウナハットの4倍近い116個を売り上げた。
昨年11月21日に北海道釧路市であった大会では「私たちバズる、売り込むやめました」というサブタイトルで研究発表した。一時的な注目狙いではなく、商品に込められたコンセプトを理解してくれるファンを増やす販売戦略の意義を込めた。
山梨県身延町の山十製紙代表の笠井伸二さん(68)は作品づくりに協力した。「夏休みも作業場に来て作品づくりに取り組んでいた。若い人たちが伝統産業に関心を持ってくれてうれしい」と話す。
商業研究部副部長の樋川元太さん(3年)は今回の取り組みを通じて県内の町役場への就職を決めた。「粘り強く完成につなげられたことは、自分にとって大きな自信になった」と振り返った。