工房で木版画をする小川信人さん=2025年7月7日、東京都荒川区西日暮里3丁目、波絵理子撮影

 伝統工芸や技術を後世に残そうと、若き職人たちが奮闘している。だが、担い手不足は深刻で、材料の調達に苦労している職人もいる。参院選では減税や社会保障など暮らしに直結するテーマが取り沙汰されるなか、「私たちの仕事をもっと知り、具体的な対策を」という声も上がる。

4代目継いだ木版画摺師 「大量消費よりも…」

 7月初旬、東京都荒川区の大型体育館に、伝統工芸の職人たちのブースがずらっと並んだ。今年で44回を迎えた「あらかわの伝統技術展」だ。

 訪れた区内の小学4年生の子どもたちに、木版画摺師(すりし)の道具を見せながら実演していたのは、関岡木版画工房4代目の小川信人さん(34)。江戸時代から続く木版画摺師の一門である日本橋石町松村系の流れをくみ、主に千社札(せんしゃふだ)や浮世絵をすっている。英国のケンブリッジ大学でも実演するなど、国際的な活動もしている。

子どもたちに木版画の説明をする木版画摺師の小川信人さん=2025年7月4日、東京都荒川区南千住6丁目、波絵理子撮影

 大学を出て、リサイクル業界で2年ほど働いた。「こんなにも物を売る人がいるんだ」と驚いた。大量消費より、一つの物を大切にする生活が自分には合っている。家業を継ぐ決意をした。5年の修業を経て独り立ちしたが、最初の2年はアルバイトで生活費をまかなったという。

インバウンド人気の裏で 材料買い占め

 区内の自宅にある工房を訪ねた。6畳ほどの部屋で、ざぶとんの上にあぐらをかき、ひざが当たるほどの低い摺台(すりだい)で制作を進める。絵の具を版木に伸ばし、湿らせた紙を当てて次々とすっていく。「ずれたら終わりなんで、結構集中力を使うんです。だから休憩中はぼーっとして、甘い物を食べます」

 近年、インバウンドの浮世絵…

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