被災家屋から運び出された書画や珠洲焼の壺などが並ぶ保管場所=2025年5月7日、石川県能登町、筒井次郎撮影

現場へ! 能登の文化財はいま(5)

 被災地の記憶も守る。それが、被災家屋に残された古文書や美術品を救い出す「文化財レスキュー」の役割だ。

 能登半島の各地でも実施されている。今年2月、石川県輪島市の現場を訪れた。

漆器や掛け軸・・・慎重に搬出

 公費解体をする重機の音が響く。更地が目立つ市街地の一角に残る民家で、国立文化財機構・文化財防災センターの高妻(こうづま)洋成センター長(62)ら5人が活動していた。

 地震から1年以上たち、2階建ての民家は傷みが激しい。屋根には穴が開き、雨漏りでぬれた床はきしむ。

被災家屋でのレスキュー作業。漆器を慎重に梱包(こんぽう)した=2025年2月15日、石川県輪島市、筒井次郎撮影

 高妻さんらはヘルメットにマスク、手袋をつけ、漆器や掛け軸などを慎重に外に運び出した。外では別の職員が一つずつに番号と品名を付けて整理し、コンテナに入れた。

 作業は3日かかった。救出された272件は保管施設に運ばれた。

 依頼した女性(60)は「物の扱いを見て、専門家のすごさを実感しました」と話した。丁寧な作業の様子に、2007年に劣化した壁画を守るために専門家たちが石室解体に取り組んだ、奈良の高松塚古墳のニュースを思い出したという。

 文化財保護の歴史に残る難事業だった。実は、高妻さんはその解体作業に携わった保存科学の第一人者でもある。

300カ所で活動、無念な思いも

 レスキューの対象は「文化財…

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