日米開戦前、若きエリートたちが導き出したのは、圧倒的敗北の未来だった――。16日、17日に2夜連続で放送するNHKスペシャルのドラマ「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」(NHK総合、午後9時~)。実在した「総力戦研究所」に着想を得たドラマだ。制作統括の家冨未央さんと新延明さんが作品への思いを語った。
- 池松壮亮が感じる不穏な空気とは 「“戦前”でないことを強く願う」
ドラマのあらすじ
猪瀬直樹氏の「昭和16年夏の敗戦」を原案に、実在した総力戦研究所に着想を得たドラマ。日本映画界の旗手・石井裕也監督が初めて戦争ドラマに挑んだ。舞台は、真珠湾攻撃の8カ月前の1941年4月、首相直属の「総力戦研究所」。若きエリートたちが模擬内閣を作り、出身官庁や企業から機密情報を集め、日本がアメリカと戦った場合のあらゆる可能性をシミュレートしていく。圧倒的な敗北の結論を手にした若者たちは、開戦へ突き進む軍や本物の内閣と対峙するが……。
――映画監督の石井裕也さんが、NHKで戦争ドラマを制作することになった経緯は。
家冨 石井さんと主演の池松壮亮さんは当初、映画化を試みようと思っていました。準備は進んでいましたが、実現はできませんでした。ただ、その時、既に決まっていたキャストやスタッフの熱は冷めていなかったんです。
そんな時、池松さん側から相談を受けました。今を生きる人たちにこの物語は大きな意味があると感じましたし、映画という形も素晴らしいですが、テレビなら劇場に来られない子どもや高齢者、入院中の人々にも届けられる。そう思いました。
――総力戦研究所の物語を、現代の視聴者に届ける意味は何ですか。
新延 タモリさんが現代について「新しい戦前」と発言して話題になりました。遠いものと思われてきた戦争が、気づけば自分たちの暮らしの中に入り込む可能性がある時代となった。戦争体験をした人たちも最初はそう感じながら、普通に暮らしていたのだと思います。
以前、「アナウンサーたちの戦争」という作品を作り、戦争を伝えた側の反省を描きました。今回の題材で言えば、「戦えば勝てる」という楽観論もありましたが、事実を把握して、戦争は難しいと考えていた人もいた。総力戦研究所では、民間、軍などの垣根を超えて優秀な人を集め、秘密裏に資料を持ち寄り、自由に議論して結論を出しました。それでも開戦へと突き進んでしまった。歴史には私たちが学ぶべきことがあると考えています。
家冨 私は届ける意味が大きく二つあると思っています。
ひとつは、組織や社会の「空気」にあらがうこと。劇中にも「空気に逆らってもいいことはない」というセリフがありますが、これはアラフォーの私自身も常に感じていることです。「意味のある作品になるはず」だと私が思ったとき、組織が「違う」と言えば、個人の意思を強く示したり、衝突したりする必要があります。
このドラマで描かれるのは平…