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自民総裁選 編集委員が問う

 40代や女性らが立候補の意向を固め、派閥の支援を拒否する声も出る。総裁選は一見、古い自民党を更新するかのようだが、擬態の可能性は残る。

 岸田文雄首相が不出馬会見で「新生・自民党を示す」と言った通り、作為は明白だ。首相の顔を替え、政権イメージの転換を装う。菅義偉氏から首相を継いで衆院選を制したのは、3年前の岸田氏に他ならない。「疑似政権交代」の成功体験を踏襲したいはずなのだ。

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野党や世論の批判をかわす狙い、常に

 疑似政権交代には、野党の攻め口を無力化し、世論の批判をかわす狙いが常にある。典型は1974(昭和49)年の故事だ。金権問題で辞任した田中角栄氏の後継首相にクリーンと称された三木武夫氏を担ぐ。椎名悦三郎副総裁の裁定による。社会党の狼狽(ろうばい)ぶりを朝日新聞の石川真澄・元編集委員が証言する。

 社会党の元委員長の墓前祭に同席していた党関係者に、田中氏の後継は三木氏だと言うと「彼らびっくりしてね、『やるもんだね、こういうことをやられたんじゃ、とてもやっぱり……』と、一瞬がっかりしていた」という(岩波書店「戦後保守政治の軌跡」)。

 だが、昭和期の疑似政権交代…

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