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国宝「風神雷神図屛風」 俵屋宗達筆 江戸時代 17世紀 京都・建仁寺蔵
(通期展示)
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 大阪・関西万博の開催を記念した特別展「日本、美のるつぼ」が、4月19日から京都国立博物館で始まる。俵屋宗達の国宝「風神雷神図屛風(びょうぶ)」や、葛飾北斎「富嶽(ふがく)三十六景 神奈川沖浪裏(なみうら)」など海外でも知られた傑作を中心に、古代から明治期までの美術工芸品で異文化交流の軌跡をたどる。

  • 奈良では「超 国宝」展も同時開催

世界とつながる日本の美術

 葛飾北斎に俵屋宗達。いずれも日本美術の巨星だが、海外との文化交流という視点で捉えると、その横顔が見えてくる。大阪・関西万博と同時期に始まる「日本、美のるつぼ」展は、国宝19件(うち新規予定1件)、重要文化財53件を含む200件で、日本美術の歴史がどのように形作られてきたのかを問いかける。

 19世紀後半、パリを中心に日本の美術や工芸が人気を集め、芸術家にも様々な影響を与えたジャポニスムが起きた。欧米各地で開かれた万博がその発信地だった。国際社会にデビューした明治政府は、万博で工芸品を売り込む一方で、日本にも美術の歴史があることを示そうとした。

 1900年のパリ万博では、西洋に向けた日本初の「日本美術史」を仏語で編纂(へんさん)し、豪華な装丁で披露した。京都国立博物館の永島明子・列品管理室長は「帝国主義の時代に、欧米の国々と同じ文明国であることを示す必要があった。海外に向けた歴史は和文になって日本人にも刷り込まれ、日本美術史の原型となった」と話す。

 海外では「グレートウェーブ」と呼ばれる北斎の「富嶽(ふがく)三十六景 神奈川沖浪裏(なみうら)」は、ゴッホが激賞し、ドビュッシーの作曲にも影響を与えた作品。欧米での高い評価が逆輸入され、日本での北斎の再評価につながった。

名品は「るつぼ」の中に

 江戸初期に描かれた宗達の「風神雷神図屛風(びょうぶ)」が世に出たのは、明治になってからのことだ。欧米で高く評価された江戸中期の尾形光琳が、宗達に私淑していたことで注目された。宗達、光琳、さらに江戸後期の酒井抱一は風神雷神図を同じ構図で描いており、東京帝室博物館で1903年に開かれた大規模な琳派展で、3点が初めてそろって展示された。

 近代国家となった日本が自国の美術史を編むなかで、宗達は、光琳、抱一と続く琳派の祖に位置付けられた。永島さんは「私たちが当たり前だと思っている日本美術史は、政治的に作られたものの見方でもある」と話す。

 平安時代の国宝「宝相華迦陵頻伽蒔絵𡑮冊子箱(ほうそうげかりょうびんがまきえそくさっしばこ)」を飾る霊鳥・迦陵頻伽は、ギリシャ神話のセイレーンと同じく西アジアに起源があるという説もある。誰もが知る名品は、様々な文化が溶け合う「るつぼ」の中から、その姿を現している。

音声ガイドは冨永愛さん

 音声ガイドナビゲーターは、世界的トップモデルであり、俳優など多方面で活躍する冨永愛さん。「私自身、日本文化に興味を持ち、未来へ紡ぐ活動を手がけています。今回は作品に思いを巡らせながら、皆さんの心に届くナビゲーションをしたいと思います」と語った。会場レンタル版は税込み650円。

開催概要

 ◇4月19日[土]~6月15日[日]、京都国立博物館(京都市東山区)。午前9時~午後5時30分(金曜日は午後8時まで)。入館は各閉館の30分前まで。月曜休館(ただし、5月5日[月][祝]は開館、7日[水]は休館)。前期展示は5月18日[日]まで、後期展示は5月20日[火]から。一部の作品は前期・後期の途中で展示替えあり

 ◇一般2千円(1800円)、大学生1200円(1千円)、高校生700円(500円)。カッコ内は前売りまたは20人以上の団体。前売り券は展覧会公式サイト(https://rutsubo2025.jp/)や主要プレイガイドなどで4月18日[金]まで販売。問い合わせは同館テレホンサービス(075・525・2473)

主催 京都国立博物館、朝日新聞社、NHK京都放送局、NHKエンタープライズ近畿

後援 2025年日本国際博覧会協会

協賛 クラブツーリズム、京阪ホールディングス、ダイキン工業、大和ハウス工業、竹中工務店、NISSHA

協力 日本航空

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