日本が経験した核の記憶は、今日の世界にどう受け止められるか。政治性、社会性を帯びた表現で知られる現代美術家、柳幸典さん(1959年生まれ)の欧州初の大規模回顧展「ICARUS(イカロス)」が7月27日まで、イタリア・ミラノで開催中だ。

柳幸典「ICARUS」展の展示風景

 ぐしゃりと潰れた車やボート、放射性廃棄物を入れるドラム缶などが山と積まれている。中央には巨大なゴジラの眼球が鎮座し、轟音(ごうおん)とともに膨らむキノコ雲を映す。

 展覧会冒頭から、原水爆と原発事故のイメージを強烈に突きつけるインスタレーション。そこには、日本国憲法第9条を細切れのネオン管で表した別の作品が組み合わせてある。

 がれきの中で赤く光る細切れの条文は「スイッチを切れば一瞬にして消してしまうこともできる。バラバラになった文節を組み立てて読もうと不断の努力をするのか否か、個々の日本人が試されている」と柳さんは言う。

柳幸典「Project God-zilla 2025 The Revenant from “El Mare Pacificum”」(2025年)、「Article 9」(1994年)

 会場のピレリ・ハンガービコ…

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