2018年12月初旬の朝、湯本正基(63)は出張先のベトナムのホテルにいた。朝食をとろうとロビーに下りると、テレビにはNHKの国際放送。そして、こんなニュースが日本語で聞こえてきた。
「『スーパー玉出』の創業者を逮捕――」
湯本から思わず声が漏れた。「……え、なんじゃこれ」
大阪市西成区で、売春に使われると知りながら建物などを貸し、暴力団側から賃料を受け取ったという組織犯罪処罰法違反(犯罪収益の収受)の容疑だった(その後、大阪簡裁が罰金30万円の略式命令)。
この5カ月前、大手鶏卵会社グループの不動産会社で社長をしていた湯本は、スーパー玉出の当時の運営会社から、事業を譲り受けたばかりだった。
何も知らされていない。まもなく、日本から問い合わせの電話が鳴りやまなくなった。
スーパー玉出は、大阪の人なら誰もが知っているといっても過言ではないスーパーだ。
1978年、西成区に1号店を開業。「玉出」は同区の地名で、日雇い労働者の街として知られる、あいりん地区(釜ケ崎)にもほど近い。
パチンコ店のような派手な黄色い看板と電飾に、名物の1円セール。「日本一の安売り王」の異名で、2000年代には50店舗近くを展開した。
「スーパー玉出を引き継がないか」
湯本によると、17年に経営…