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東京ゲームショウのスクウェア・エニックスのブース。ドラゴンクエストシリーズの展示もあった=2023年9月22日、千葉市の幕張メッセ、田中奏子撮影
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 ドラゴンクエスト(ドラクエ)シリーズを手がけてきた大手ゲーム会社スクウェア・エニックス(スクエニ)が、業績の不調に伴いゲームづくりの方針を見直し、転換する。業界を長年見てきたゲームアナリストの平林久和氏は、失敗作の清算は「健全な振る舞い」と語る一方、世界で売れるロールプレイングゲーム(RPG)を打ち出すには壁があると指摘する。

 ――近年のゲーム市場のトレンドをどう分析していますか。

 「(ゲームの企画と販売をする)大手パブリッシャーの業績は世界的な傾向として低調になっている。一つには、コロナ禍の巣ごもり需要が沈静化した。さらに上場企業は株主に責任を果たそうとして安全運転し、何十年もゲームづくりで『冒険』ができていない点が挙げられる。確かにゲームのユーザーは有名なものを買う保守的な価値観を持っているが、新しいもの好きの価値観も同居している。旧来の主要タイトルのシリーズ作品だけでは、マンネリの印象を与えかねない。大手ゲーム会社は常に売り上げの目減りと戦わなくてはいけない」

 「一方、オンラインプラットフォームを通じて誰もがゲームを開発、販売できる環境が整った。『スイカゲーム』や『パルワールド』といったインディーゲームが評判になって、爆発的に当たっている。世界的に大手は経営で難しい局面を迎えている」

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 ――そんな中、スクエニでは昨年度からコンテンツの見直しをした結果、一部で開発を中止して221億円の損失が出ました。

 「大手が販売価格7千~9千円のハイエンド(高性能)なゲームをつくる時の大体の総開発費は、宣伝費も入れて100億~200億円と言われている。スマートフォンのアプリなら、最低でも30億円程度だろう。複数タイトルの開発を中止すれば、100億円級の損失は容易に達する数字なので、ゲーム業界の人間が見ると大きいと驚くほどの額ではない」

 「財務的な見方をすると、とても良いことだと思っている。開発途中で『失敗している』と言えるのはむしろ健全なこと。企業に体力があるから言える。開発途中のゲームはごまかそうと思えば資産とみなして問題を先送りできる。精査して損失を明らかにするのは、実はゲーム会社の企業経営として健全な振る舞いだ」

 ――コンテンツの見直しの過程でスクエニの社長は「ラインアップの数が多すぎた」と述べたそうですが、どう感じますか。

 「エンターテインメントには当たりはずれがある。ラインアップの数が多いことそれ自体が悪いこととは思わない。リスクを覚悟の上での実験は必要だ。だが、それが当たるかわからないけどやった、あるいは属人的な理由でつぶせなかったものが無尽蔵に増えてしまったとしたら改めるべきだ」

 ――スクエニがゲームで赤字を出している根本的な要因をどうみていますか。

 「ドラクエやファイナルファ…

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