金峯山寺の3体の金剛蔵王大権現を上映する「デジタル文化財ミュージアム KOISHIKAWA XROSS」のVRシアター。実際の蔵王権現は秘仏のため、特別御開帳の期間以外は非公開=TOPPAN提供

 一度見たら忘れられない。桜の名所として知られる奈良・吉野山にある修験道の金峯山寺(きんぷせんじ)には、迫力ある「日本最大の秘仏」がある。

 蔵王堂(国宝)の本尊、3体の金剛蔵王大権現(だいごんげん、重要文化財)だ。高さは7メートル前後ある。躍動感のある青黒い体に、悪を粉砕する忿怒(ふんぬ)の形相。ただ、普段は厨子(ずし)の戸帳の奥にあるため、拝観できるのは特別ご開帳のある春と秋の一時期に限られる。

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 そんな蔵王権現を通年で体感できるVR(仮想現実)作品「金峯山寺」が、東京で公開されている。制作した印刷大手TOPPANの本社ビルにある「デジタル文化財ミュージアム KOISHIKAWA XROSS(コイシカワ クロス)」のシアターだ(公開は土日など、要予約)。

 制作期間は4年。吉野山を含む世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道(さんけいみち)」の登録20周年となった昨年に完成した。

恐ろしい姿が間近に迫る

 6月にこの作品を鑑賞する機会があった。弧を描く大型スクリーン(幅20メートル、高さ5メートル)で約20分間上映される。超高精細デジタル撮影やCGを駆使した16Kの映像は、没入感たっぷり。浮いたような感覚で、恐ろしい姿の蔵王権現の間近に迫る。そんな通常ではありえない体験ができた。

 建物や仏像を精密に計測して…

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