「銅器のまち」として知られる富山県高岡市金屋町で、通り沿いに置かれた銅像4体が一夜のうちに姿を消した。付近の防犯カメラには、何者かが銅像を運び去る様子が映っており、県警が窃盗容疑で捜査している。
国重要伝統的建造物群保存地区の石畳の通りを、車のヘッドライトが照らし出す。金属工芸品卸・販売の「大寺幸八郎商店」前。店頭の防犯カメラが12日午前1時40分ごろ、不穏な夜を記録していた。
黒っぽい車が止まり、二つの人影が現れる。店の前にあった銅像「体操坊や こうはちろうくん」(高さ約1・1メートル)に近づくとそのまま持ち上げ、車の後部に運び込む。テールランプを光らせて走り去るまで、わずか2分ほどの出来事だった。
同商店代表の大寺康太さん(47)はその日の朝6時半ごろ、銅像がないことに気づいた。警察に通報し、周囲を確認すると、ほかに近隣の店の銅像3体もなくなっていることがわかったという。
大寺さんによると、「こうはちろうくん」は戦後、ラジオ体操が流行したころに造られたと伝わる。男の子が体を動かす様子を表現。60年以上置かれ、店のシンボル的存在だった。
近年は、観光客らの撮影スポットにもなっていた。店のSNSには「楽しそうに同じポーズを取って遊んでいた、子どもたちとの思い出深い銅像が。許せません」「私も同じポーズで写真を撮った一人です。悲しいです」などのコメントが寄せられている。
大寺さんは「銅像が並んでいる光景を奪われてしまい、本当に残念で悲しい。小学2年の長女も泣いてしまい、地元の子にもつらい思いをさせてしまった」と話す。銅の価格が高騰しており、こうはちろうくんが形をなくし、地金になってしまう不安もよぎるという。「犯人は早く銅像を返してほしい」
【動画】「銅器のまち」富山県高岡市で「体操坊や」の銅像盗まれる=大寺幸八郎商店提供