Smiley face

 華やかな門出の日になるはずだった。

 2011年3月11日、小林優吾(29)=トナミ運輸=は福島県富岡町の富岡第一中学校を卒業した。

 式の後、8人ほどのグループでカラオケ店へ向かった。

 普段はバドミントン部の練習に明け暮れる日々。部外の友だちと遊べるのがうれしかった。

写真・図版
富岡高時代の保木卓朗(右)と小林優吾=本多裕樹さん提供

2011年、福島県富岡町で東日本大震災を経験した5人がパリ五輪のバドミントン日本代表に選ばれました。当時の中学生たちは苦境を乗り越え、どのように五輪までたどりついたのか。5回の連載で紹介します。

 午後3時の開店を、駐車場で待っていた。

 午後2時46分、突然の大きな揺れ。目の前で車が上下に跳ね、店の外壁がはがれおちてきた。

 友人の親が運転してきた車の中に避難した。

 すると、坂の下から30人ほどが走ってきた。

 一人の男性が、叫びながら…

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