風俗店で働く主人公が、認知症の祖母を介護する1週間を描いた映画「うぉっしゅ」が公開中だ。重く暗くなりがちなテーマを、徹底的にポップで明るい作品に仕上げた岡崎育之介監督(31)は、放送作家・作詞家として「昭和」に名をはせた故・永六輔さんの孫。「昭和がムカつくから、明るい令和を描きたかった」と語る監督に、介護など社会保障を担当する論説委員(58)が話を聞きました。
――認知症高齢者の介護を取り上げようと着想したきっかけを教えてください。
風俗店で使われる、股下に空間がある椅子は、介護用品としても使われている。そんな小話を耳にしたのが出発点です。とんちがきいていて、おもしろいなと。それで、風俗店で働く女性と、孫の顔を忘れてしまった認知症のおばあちゃんという一見正反対の2人が、血はつながっていながら「初対面」を繰り返し、そこから展開するストーリーを考えました。
――ご自身の経験もあるのですか。
父方の祖母は、シングルマザーとして父を育てる一方、経営者としても成功したキレッキレのビジネスパーソンでした。でも、70代後半で引退してすぐに認知症になり、今は老人ホームで暮らしています。
さほど遠くにいるわけでもないのに、会うのは半年に1度くらい。ある時、取材を兼ねて面会の予約をしたのですが、寝坊してしまった。祖母のことをないがしろにしたと強く反省すると同時に、気づきました。認知症は人のことを忘れてしまう病気とされますが、本当は、僕たち親族が忘れるから、老人も僕たちのことを忘れてしまうのではないか、と。
面会の時だけ心配される老人と、接客している時だけ愛される風俗店で働く女性。誰かを洗うことが共通する介護とソープを舞台に描こうと思ったのです。
――少子化、認知症高齢者の激増など、暗くて重い将来を思い描きがちです。一方、監督は映画公式サイトで「日本の作品は暗すぎる。もうそんな時代じゃなくていい。後に語られる〝明るかった時代、令和〟を、この映画から始めます」とコメントしました。なぜですか。
映画【うぉっしゅ】
親には言わずに風俗店で働く主人公・加那(中尾有伽)は、母からの依頼で1週間だけ祖母・紀江(研ナオコ)の介護を引き受ける。紀江は認知症が進み、孫のことを覚えていない。加那は、昼は祖母宅で介護、夜は風俗というダブルワークを続ける中で、紀江の過去にも触れ、二人の関係は変化していく
反骨心ですね。令和を明るく…