全日本吹奏楽コンクールには中学生、高校、大学、職場・一般の4部門がある。47都道府県の中で、唯一どの部門にも代表を出したことがないのが鳥取県だ。
だが、鳥取県の高校生たちは、他の地域に劣らない情熱を持ち、真剣に部活動に取り組んでいる。
県内のトップバンドのひとつ、米子市の米子北高校吹奏楽部。2024年7月にたずねると、遠くに「伯耆(ほうき)富士」とも称される雄大な大山(だいせん)を望む校舎で、悲願の全国大会出場を目標に熱く練習を続けていた。
合奏で指揮をする顧問の大曲義和教諭は、総勢59人の部員の演奏を止め、こう指導した。
「音を出してから、音程が合っているかとか音色がどうかとか考えてたら遅いんよ。音を出す前に、楽器を吹く唇の形を作っておかにゃ」
大曲を部員たちが真っすぐな目で見つめる。もっとうまくなりたい、いい音楽を奏でたい、という思いがその瞳にあふれている。
「じゃあ、もう一度。いくよ!」
指揮に合わせて演奏が再開された。今年の自由曲であるプッチーニ作曲の《歌劇「トスカ」より》だ。
大曲のすぐ目の前でピッコロを吹く部長の「サキチ」こと田平咲(3年)は、《トスカ》を演奏しながら喜びが胸にあふれてくるのを感じた。
「中1で初めてコンクールで演奏した自由曲が《トスカ》だったんです。高校生活最後のコンクールでまたこの曲が吹けることがうれしいです。もともとはオペラなので、歌詞の意味やオペラのシーンをイメージしながら、それを演奏で表現したいと思っています」
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【連載】My吹部Seasons
吹奏楽作家のオザワ部長が各地の吹奏楽部を訪ねます。
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21校が集まった昨年の中国大会。8校に金賞が送られ、そのうち3校が全国大会に出場する代表に選ばれた。
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金賞に足りないものは…
吹奏楽が大好きで負けず嫌い…