茨城県取手市教育委員会が、中学生に教員のやりがいや素顔を伝える課外講座を始めた。キャリア教育の一環で、なり手不足が続く中、当面の対策とは別に、将来の教員確保につなげたいという。
市立取手第二中学校で3月13日にあった「『未来の先生』ラボ」。放課後に集まった1、2年生26人に、市教委指導課指導主事の間下(ましも)英信教諭(50)が語った。「茨城県の先生は小学校も中学校も勤務するので、いろんな場所で経験ができます」
間下さんは神栖町(現・神栖市)の小学校を振り出しに、高萩市、守谷市、取手市と県内各地の小、中学校で教壇に立った。途中、ロンドンの日本人学校にも赴任。茨城大学に内地留学もした。趣味の吹奏楽で部活動の指導もしたという。
「みなさんが6歳から15歳まで最も多感な時期を一緒に過ごせるのが一つの魅力。希望すれば海外にも行くことができます」とPR。「給料は公務員なので安定しています。夏休みは5日間だけなんですが、ほかの職業に比べたら学校の夏休み期間は休みやすいので、海外旅行に行く先生も多いです」と明かした。
同じく指導主事の宮国泰人(みやぐにたいと)教諭(41)は、小学校で4年生を担任していたとき、新型コロナ禍で運動会ができなくなり、代わりに自分の故郷・沖縄県の伝統芸能「エイサー」をみんなで踊った経験などを紹介した。
「自分の得意なことや好きなこと、性格をよく知り、それを何かに生かす力を持っていたら、先生としても楽しい生活が送れるかなと思います」
生徒からは「給料はどれくらいなんですか?」「異動は希望できるんですか?」などの質問が飛んだ。ともに2年生の岡部紗奈さんは「夏休みが少なすぎてびっくり。でも、話を聞いて楽しそうだなと思った」、板東心愛さんは「将来のことを考えるようになり、学校の先生も楽しそうだと思って興味が湧いた」と感想を話した。
ラボは希望者を募って学校ごとに開いている。3月4日に始め、取手二中まで3校で計57人が参加した。「先生になるには、今どんな準備をしておけばいいですか?」といった熱心な質問もあり、生徒の反応は上々だという。
取手市では3月1日時点の教員数が、小中全20校の合計で定数より7人少なかった。今後の教員不足への危機感は強い。
間下さんは「子どもたちが知らない先生の魅力を伝えたい」。その魅力を宮国さんはこう表現した。「子どもたちの成長に触れ、自分自身も学び成長できるところです」