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 東京大が検討している授業料の値上げ問題に反対する学生の間で、55年前のある文書が注目を集めた。大学側が学生の声を十分に聞いていなかったことなどが、1969年の「東大確認書」に違反するというのだ。注目された理由をたどると、憲法が保障する「学問の自由」につながる論点が浮かぶ。東大は近く、値上げについて発表する見込みだ。

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東大の学園祭「五月祭」で横断幕を掲げて授業料値上げに反対する学生たち=2024年5月19日、東京都文京区の東大本郷キャンパス、増谷文生撮影

 東大は6月4日、学内の会議で現行の学部・修士課程53万5800円と博士課程52万800円を、来年度入学者から20%増の64万2960円にする案を示した。

 20年ぶりの授業料値上げ案を学生らが知ったのは5月中旬。教養学部の学生自治会は5月末、全学の学生や院生にアンケート。回答した約2300人の91%が値上げに反対した。学生らは「値上げ案が学生の意見を聞くことなく大学本部でつくられ、既定路線化しつつある」と批判。確認書で、「大学の自治」については教授会だけでなく「学生・院生・職員も固有の権利を持つ」とする「全構成員自治」が認められていると指摘し、「学生が自らに大きくかかわる決定に携わることは明白だ」と主張した。

「確認書」とは何か

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1969年1月10日に結ばれた「確認書」。東大の加藤一郎総長代行と各学部代表の学生らが10項目26カ条の各項目に署名した。経済学部代表として、後に衆院議長などを歴任した故町村信孝氏の名前も=東大闘争資料収集委員会提供

 締結のいきさつには、68年…

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