Re:Ron(リロン)編集部から

 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)へのノーベル平和賞授賞が10月11日、ノルウェーの選考委員会から発表されました。被爆者たちが、核兵器がもたらす惨劇を世界に伝え続け、再び使うことは許されないという「核のタブー」を築き上げてきたことが、2025年8月の原爆投下80年を前に高く評価されました。

 Re:Ronでは、核兵器禁止条約の制定を主導した功績で2017年にノーベル平和賞を受賞した国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)副事務局長のダニエル・ホグスタさん(37)にインタビューしました。ホグスタさんは長年、日本被団協のメンバーと交流があり、今回の受賞が「核のタブー」のさらなる強化や、批准国数の拡大に苦労する核禁条約の後押しになることを期待しています。

 さて、授賞決定の余韻もさめやらない今月1日、国連総会第1委員会では象徴的な二つの決議案が採択されました。一つは、日本政府が毎年提出している「核廃絶決議案」。正式名は「核兵器のない世界に向けた共通のロードマップ構築のための取組」で、核保有国の米国と英国も賛成しました。二つ目は、核禁条約を推進する決議案で、核保有国や日本など「核の傘」の下の国々は反対しました。

 違いは何でしょうか。米国なども賛成した日本提出の決議案は、核廃絶に「向けた」という方向性を示す内容が柱ですが、米国や日本などの国々が反対する核禁条約は、さらに、核使用や「核の傘」の根底にある核抑止論につながる「核使用の脅し」も否定します。

 方向性を示すだけなら、「核廃絶」は無限遠点のような非現実的な目標になる恐れもあります。現実味を高めるために、人々はどう立ち向かえるのか。引き続き注目し、考えていきます。

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