核兵器禁止条約第3回締約国会議で、赤十字国際委員会の声明を読み上げる高垣慶太さん(右)=2025年3月6日、米ニューヨーク、同委員会提供

 米ニューヨークの国連本部で開かれている核兵器禁止条約の第3回締約国会議では、広島出身の若者や広島県選出の国会議員、広島市長が会長を務める平和首長会議の代表者らが次々と発言している。日本政府は条約を批准せず、過去2回に続きオブザーバー参加も見送った中で、核兵器廃絶や被害者救済を求めるスピーチを続けている。

 6日は、赤十字国際委員会(ICRC)のユース代表として広島市出身で早稲田大4年の高垣慶太さんが発言。医師だった母方の2人の曽祖父がそれぞれ広島、長崎で被爆者の治療にあたったことを語った。

 高垣さんは「元通りにしてくれ」という意味の広島の方言「まどうてくれ」に言及し、「被爆者たちが発した必死の願いが込められている」と述べた。核兵器の使用や実験で被害を受けた人々の援助や環境の修復を求め、「国際社会は核兵器を廃絶し、現在も苦しむ人々、特に見落とされている人々の補償や汚染された自然環境の改善に協力して取り組むべきだ」と訴えた。

 5日は国際NGO・平和首長会議を代表し、副会長を務めるドイツ・ハノーバー市のベリット・オーナイ市長と香川剛広事務総長が演説した。すべての国が条約を批准し、対話を通じた紛争の解決に向かうよう訴えた。

 香川事務総長は日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞に触れ、「『ヒバクシャ』が被爆の実相を世界に伝える献身的な貢献をしてきたことが評価された」と話した。その上で「国際社会に『核兵器の使用は決して許されない』というメッセージを改めて示している」と述べた。

 オーナイ市長は演説で、「国連憲章にうたわれているように集団安全保障のシステムが機能するべきだが、強者の力が支配する世界へ向かいつつある」という現状認識を示した。さらに「核抑止による保護を求める国があるが、核抑止によって核戦争が起きていないという証拠はなく、むしろ人類を危険にさらしている」と指摘。核兵器廃絶を視野に入れた核軍縮が必要だとして、核禁条約の重要性を訴えた。

 平和首長会議会長の松井一実・広島市長と副会長の鈴木史朗・長崎市長は新年度予算案を審議する市議会定例会と日程が重なったため出席を見送った。

 4日にあった「核戦争の真の代償」を考えるパネル討論では、広島県選出の森本真治参院議員=立憲民主党=が日本の国会議員としては初めて、締約国会議で発言した。

 森本議員は被爆から80年後の今も放射線の影響で苦しむ人、遺伝的な影響に不安を抱く人がいることに言及。「黒い雨」が広範囲に降り、原爆の攻撃対象となった地域以外にも影響が広がったと指摘。「核兵器と人類は共存できない」と強調した。日本政府が次回以降の会議でオブザーバー参加するよう、働きかけを強めるとも述べた。

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