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提訴に至る経緯などを説明する原告の男性=2024年9月18日、名古屋市中区、高橋俊成撮影

 詐欺罪で起訴され、無罪が確定した名古屋市の男性(61)が、「検察が故意に証拠を隠し、冤罪(えんざい)を生んだ」として、国に550万円の賠償を求めて名古屋地裁に提訴した。提訴は5日付。男性と代理人弁護士が18日に会見し、明らかにした。

 訴状などによると、男性は2018年5月、同市内の運送会社社長(21年に別の事件で詐欺罪などで起訴、24年に有罪確定)から融資名目で3千万円を詐取するなどしたとして、19年に詐欺容疑などで愛知県警に逮捕され、名古屋地検に詐欺罪で起訴された。

 男性側は捜査段階から一貫して否認した。地検は社長と融資を仲介した男性弁護士(同、公判中の24年に死亡)の被害に関する証言を信用し、男性に懲役2年6カ月を求刑。一審・名古屋地裁は21年8月、懲役2年6カ月執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。

決め手になったLINE履歴

 名古屋高裁の控訴審では、男性の弁護人の要求により、事件当日などの「社長と男性弁護士間のLINE履歴」が客観証拠として開示された。2人は一審で「事件当日以前から融資を検討していた」などと証言していたが、実際は事件当日になって初めて融資に関するやりとりをしていたことなどが履歴から判明。そのため証言の信用性が乏しいとして審理が地裁に差し戻され、差し戻し審判決は23年10月、これらを踏まえ、男性を無罪とし、確定した。

 男性側は、地検が最初の地裁判決前に男性弁護士を強制捜査した段階で、LINE履歴を入手していたと主張。有罪立証の柱となった社長らの証言や、起訴内容と矛盾する証拠を隠蔽(いんぺい)して有罪の論告をしたなどとして、検察官の対応が違法だったと訴えている。

 男性は会見で、「はらわたの煮えくりかえる思い。検察が証拠を隠して有罪を勝ち得ることがあっていいのか」と述べた。名古屋地検は「訴訟が提起されたことを承知しておらず、コメントは差し控える」とした。(高橋俊成)

男性側、証拠の「全面開示」訴え

 詐欺罪で名古屋地検に起訴され、無罪が確定した名古屋市の男性(61)が賠償を求めて国を提訴した。男性は18日、代理人の金岡繁裕弁護士と記者会見し、検察側の対応に憤りをあらわにした。

 男性は2018年5月、融資名目で運送会社社長から3千万円を詐取したとして、翌年10月に詐欺容疑で愛知県警瑞穂署に逮捕され、電磁的公正証書原本不実記録などの容疑でも再逮捕された。

 男性は「何のことかさっぱり…

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